2010-10-28

「精神」

岡山県にある精神科診療所で撮影されたドキュメンタリー。

モザイクもなし、音楽もなし、ひたすら診療所での日々や患者の方々を切り取って、現実そのものを映し出している。 赤裸々すぎて心が痛くなる。涙が出る。そして、クレジットで息を呑む。びっくりするような衝撃的なシーンはないけど、最初から最後まで真実しか見えない、このドキュメンタリー全体が深い衝撃を与えるものなのだと思った。

これを観て、「何だ健常者と変わらないじゃないか、普通に会話ができるし、意味不明なことを言ってるわけじゃないし」と思う人もいるはずです。それは、特典映像で出演された患者の方がおっしゃってるんだけど、「あれは人前に出て話すことができるぐらい、大丈夫な時だから」 だからこそ「本当に辛い時がどんなものか、もっと踏み込んでほしかった」ともおっしゃってるんですが・・・ それはそれでもっと見ごたえのあるものになったかもしれない。でも、そこに踏み込んでしまったら、きっといわゆる「健常者」との壁がはっきりしてしまう、つまり、ありきたりの今までも存在していた偏見が生まれてしまうんだろうと思う。私には、踏み込もうとしなかった(踏み込めなかった?)視点に監督の優しさが見えた。

健常者との境は紙一重かもしれない。だけど、やっぱりその差は確実にある。どうして心が痛くなって涙が出るのか、それは、同情でも共感でもなく、境目がはっきりと見えてしまうからだ。

とても辛い気持ちになるけれど、素晴らしいドキュメンタリーです。

しかし、著名人コメントにある福島みずほのコメントがアホくさい、政治家ってムカつく人種だわ、やっぱり。濁りまくった腐りきった眼で映画観たんだろうな、バカバカしい。

2010-10-25

Mothertongue - Nico Muhly




注文したNicoのアルバムはこれ。

Bjorkのアルバムにも参加しているのに、恥ずかしながら今までずっとスルーしてた(クラシック出身の人の音に興味ないから)。が、何でもっと早く彼の世界に飛び込まなかったんだろう・・・と後悔しまくっている。もっと掘っていかなくては・・・

このアルバムは大きく分けて3部構成になっていて、「声」に照準を当てて、Abby Fischer, Helgi Hrafn Jonsson, Sam Amidonをフィーチャーして作られています。

囁き声がさざ波のように近づいて、バーン!目の前でしぶきを上げる。そんな感じで始まって、音の波がうねったりドラマチックに色んな表情を見せつつも、最後は360度が大海原 みたいな壮大な景色へと移っていく。久しぶりに聴いた後にショックでポカーンとなった。

「声がテーマ」というと、Bjorkの「声だけでアルバム作っちゃった★」な"Medulla"を思い出すのだけど(そして、ニコはそのアルバムに参加している:クレジット参照)、Bjorkのは「人間の声が持つ色んな可能性・限界を見出して、いかにテクノロジーに落とし込んで音楽にしていくか」にクローズアップしている(それ以外にもあるんだけど)、Nicoは「声が持つ”音としての表情”をいかに発展させて表現していくか」 という違いがあるのかなー、と考えた。テーマが同じのようで、違う方向性からのアプローチだと思った。

しばらく、Nicoの環にのって色々と聴いてみよう。





2010-10-22

boy lilikoi

until Oct.21.なんですけど、jonsiのライブまるごと

これ

奈良美智さんがtweetされてて、さっき見ました、胸がぎゅーーってなった、もちろん泣いた、

ラストはカオス・・・ ほんとに嵐を呼び起こしてる・・・

意識してなかったけど、先日からずーっと続いてる環にNicoがいるなぁ。彼のアルバムを注文したから、届くのが楽しみです。

2010-10-21

i can ease your pain



先日、「ギルモアのギターが大好きって理由は何?ていうか、pink floydが好きな理由って具体的に何なの?」と聞かれて、答えるのにちょっと困った。

sydがいなくなってしまってからのpinl floydの魅力は、コンセプトや音響に対するこだわり等々、「バンドの全てを彩っていた天才の感覚をどうやって構築していくか」 っていうところだと思う。それはsydの魅力を再現するのではなく、自分たちでゼロから築き上げる新たな感覚。サイケデリックだったものを、人間の五感をフル回転させるような立体的で壮大な感覚へとチェンジしていった。それはキャッチーではないけど、とても普遍的で、だから多くの人に聴かれているんだと思ってます。

ギルモアのギターは、テクニックは超絶ではないけど、音そのものが超絶。

何万人の大観衆を前に、comfortably numbのソロを弾くのは、気持ちいいだろうなぁ。

Metallic Spheres - The Orb ft. David Gilmore




音楽の神様ありがとう。

最高。

それだけ。

2010-10-20

Swanlights - Antony and the Johnsons



Bjorkとのデュエットが話題になっているAntony and the Johnsonsの新作。

アントニーの声にはいつも涙が出ます。そこには大きな悲しみがあり、他人へ向けられた無垢な愛があり、自分自身を必死に守ろうとする・でも同時に解放させたいと願う葛藤があり、何よりも愛を信じる強い気持ちがある。ボーイ・ジョージのことを"you are my sister"と歌うアントニーに、時にあたたかい優しさを感じることもある。だけど、それ以上に他人との繋がりを求めて傷ついてしまう、繊細さと純粋さを見ることもある。それはジェンダーという色眼鏡を通して、見ているだけなのかもしれないけど。彼の声に癒されると同時に胸が苦しくなるのは、たぶん、そういう風に私が感じているから。

Bjorkとのデュエットは、もちろん、涙。"swanlights" "christina's farm"はとにかく圧巻。

別世界の美しさを見ているのではなく、日常の中で瞬く美しさを閉じ込めたような、例えばお日様がキラキラ光ってきれいだな~ってふと思う瞬間 や、カフェで何もせず座ってたら素敵な音楽が流れてきてあったかい気持ちになる、そういう瞬間の美しさを拡大して展開していっている。同じ人間とは思えないぐらい、崇高な人だと思っていたアントニーが、横でニコニコ笑っているような生々しさを感じたり。

はー、いつかライブを見てみたい・・・



"thank you for your love"のPV。THEアントニーな感じ。
The video is comprised of Super 8 footage that Antony shot when he first arrived to New York City as a teenager in the early 1990's.



こっちはライブ映像。

2010-10-19

xx - The xx


去年、海外メディアがこぞって絶賛していたUK出身バンドThe xxのアルバムを今更ながらのタイミングで購入。マーキュリープライズを受賞したとのことで、注目度はさらに増しているはず・・・ 雑誌でインタビューを読んで、不思議な名前だな~キスキス?とか、20歳そこそこなのに落ち着いてる感じがする、と思って気になってたのです。

ドラムレスの男女3人組で(当初はバリアって女の子もいたけど脱退)、それぞれエレクトロニカだったりhip hopだったり音楽の趣味が違うそうで、バンドで出す音はそれぞれの趣味の中間点らしい。 「ここ10年間イギリスで現れた最もオリジナルなサウンド」と言われてるそうで、まあそれは大げさかも?と思うけど。でも、受賞するのも納得な素晴らしい内容です。

RogerとRomyの気だるいツインボーカルと、Jamieのドラムマシンの音が淡々とビートを刻んで、どんどんメランコリックな世界に広がっていく。ダークで少し悲しい。感情のいちばん底辺の部分をすくい上げて、一面に広げて黒をベタ塗りしていくような。シンプルなんだけど、音の感情の奥行きが深くて、静かな気持ちになる。ここからどんな風に進んでいくのか、すごく楽しみ。

 先日のマーキュリープライズでのパフォーマンス。

As One - Tony Lionni


UK出身でベルリンを拠点に活躍しているDJ/プロデューサーのTony Lionniの1stLP from Freerange です。以前からずっと彼のトラックの大ファンで(初めて買ったのはthis feelingだったかな)、必ずリリースはチェックしてます。

いわゆるフロア向けの機能的なトラックというより、どこまでも気持ちよく浮遊させてくれる、しっかりしたグルーヴと透明感のあるメロディーが響くdeep house。Aril Brikha meets Satoshi Fumiさん みたいな、そこにネオンの輝きをまとった音が重なっていって、深い奥行きのある音の色が広がっていく。ギラっとした感はないけど、Spirit Catcherみたいなキャッチーな音の重ね方があったり、デトロイトな空気をふわっとハウシーに乗せてみたり。"precious"のボーカルはfromデトロイトのMarvin Belton。とっても心地よい!CDだと12曲収録ですが、beatportはexclusive trackで"Round & Round"も入ってます。女性vocalが乗っかってピアノの音が弾ける、かっこいいトラック。

飽きずに繰り返しずーっと聴いてます。

(去年のだけど)RAのインタビュー、後ほどじっくり解読しよう・・・