2012-10-09

塩田千春「他者である私」

入ってすぐ左にある作者の言葉。

「私であるのに私でないような感覚 」
「実際に私であるのかつかめず」
「いつも曖昧で」
「ぐずぐずしている感覚」

そして、そこには、白いドレスから拡がるおびたたしい数のチューブと、不規則に上下する赤い液体。左を見ると、無数の糸に結び付けられ空間の中に閉じ込められた白いドレス。

見つめれば見つめる程、その感覚がわかるし、ずっとずっとその感覚を持て余していたから、ふっとそれが解放されたような気持ちになって、じわじわと涙が出てくるのでした。

少し薄暗い会場の壁に、たくさんの糸が網のように影になっていて、その中に自分の影も写りこんでいました。腕を動かせば影も動くけど、それがまるきり他人のように見える、私自身の影なのに。

作品に込められた感覚をあまりに密接に触れたような気がして、建物から出た後はしばらく恐怖心でいっぱいの放心状態でした。

もっといっぱい作品が観たいです。

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